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【新内閣下でどうなる?】「少人数学級」曖昧な目的と実現への課題

第43回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■学校とは学習だけをする場ではない

 さきほどのアンケートでは、「一人ひとりの存在感が大きくなり、活躍の機会も増える」との教員からの回答もある。全国学力テストの成績よりも、もっと大きな目標、子どもたちが本当の意味で成長することに役立つという視点ではないだろうか。
 教員が少人数学級の実現に期待しているのは、子どもたち一人ひとりに目が行き届き、成長を見守ることのようだ。その効果は、長期的な視野で見なければならないものだ。それにも関わらず、教育再生実行会議のWGは短期的な結果を求めている。少人数学級の実施によって、全国学力テストの成績向上といった効果のみを求めているようにしか思えない。

 WGだけでなく、自治体や保護者も同じ効果を求めてくるだろう。目に見える効果が望まれることになる。少人数学級が実現しても、求められるものが目に見える短期的な効果であれば、教員はそれに応えることを要求されるに違いない。
 目が行き届く指導は、一人ひとりの点数を上げるためのものになるかもしれない。よりよい授業も、点数に結びつく授業ということになってしまうかもしれない。それを、教員は受け入れていくのだろうか。

■「教員の質」問題には定義が必要だ

 さらにWGでは、少人数学級には賛成し、そのためには教員の数を増やすことも受け入れるが、ただし「教員の資質の確保」という意見もあった。
 これについては、教員アンケートでも指摘がある。「教員を増やすことによって、教員の質が下がる」といった意見があったのだ。しかし、教育再生実行会議WGで指摘された「教員の質」と、教員アンケートのなかででてきた「教員の質」は同じものなのだろうか。

 文科省が公表した調査結果では、2019年度教員採用試験の倍率が全国平均で4.2倍、小学校では2.8倍にまで落ち込んでいた。志願者数が減りつづけていることで、教員採用試験の倍率は低下傾向にある。
 小学校で2.8倍と3倍を切ったことから、「質の低下につながる」と騒ぎになったものだ。
 ところが、問題にされている「質」の中身がいまいち見えてこないのも事実である。倍率が下がったといっても、志願者は全員が教員資格試験に合格した有資格者である。公に「教員の質を備えている」と認められた人たちなのだ。それで「質の低下」を問題にするのなら、資格試験そのものを問い直す必要があるはずなのだが、そうした動きにはならない。

 少人数学級が注目を集めていくのと並行して、この「質」の問題が急浮上してくる可能性は高い。その「質」の中身を曖昧にしたままにすると、教員は自分の考える「質」とは違うものを押し付けられることにもなりかねない。

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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